1億円上限:「一の事業者ごと」の読み方
免税事業者からの仕入れに対する経過措置には、10億円から1億円へ引き下げられた控除限度額があります。判定は取引先1者ごと。仕入れ全部の合計ではありません。適用開始は決算月によってずれます。
判定の単位
取引先1者ごと
免税事業者からの仕入れを全部合計するのではありません。 10億円から1億円へ引き下げられ、 2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。
条文はこう書かれています
一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの額の合計額がその年又はその事業年度で1億円(改正前:10億円)を超える場合には、その超えた部分の課税仕入れについて、本経過措置の適用を認めないこととされました。 国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」p.2[1]
読み落としやすいのは次の3か所です。
- 一の 取引先1者ごと 「一の適格請求書発行事業者以外の者からの」。免税事業者全体の合計ではありません。
- 年/年度 課税期間ではない 「その年又はその事業年度で」。条文は「課税期間」という語を使っていません。
- 超過分 超えた部分だけ対象外 1億円までの部分には経過措置が適用されます。全額が使えなくなるわけではありません。
税込か税抜かは書かれていません。
国税庁のリーフレットにも財務省の大綱にも明記がなく、消費税法30条の
「課税仕入れに係る支払対価の額」という語も使われていません[2]。
当サイトでは解釈を付けず、原文の引用にとどめています。
1億円前後の取引がある場合は、税理士にご確認ください。
控除割合の引き下げとはタイミングが違います
ここを混同すると、自分の会社にいつから効いてくるのかを間違えます。
| 控除割合の引き下げ | 控除限度額(1億円) | |
|---|---|---|
| 判定の基準 | 課税仕入れを行った日 | 課税期間の開始日 |
| 開始 | 2026年10月1日 の課税仕入れから | 2026年10月1日以後に開始する課税期間から |
| 決算月の影響 | なし | あり(最大11か月ずれる) |
決算月別の初適用課税期間
2026年10月1日以後に最初に始まる課税期間がいつになるかは、決算月で決まります[1]。
| 決算月 | 初適用の課税期間 | その期の開始日 |
|---|---|---|
| 1月 | 2027/2/1〜2028/1/31 | 2027/2/1 |
| 2月 | 2027/3/1〜2028/2/29 | 2027/3/1 |
| 3月 | 2027/4/1〜2028/3/31 | 2027/4/1 |
| 4月 | 2027/5/1〜2028/4/30 | 2027/5/1 |
| 5月 | 2027/6/1〜2028/5/31 | 2027/6/1 |
| 6月 | 2027/7/1〜2028/6/30 | 2027/7/1 |
| 7月 | 2027/8/1〜2028/7/31 | 2027/8/1 |
| 8月 | 2027/9/1〜2028/8/31 | 2027/9/1 |
| 9月 | 2026/10/1〜2027/9/30 | 2026/10/1 |
| 10月 | 2026/11/1〜2027/10/31 | 2026/11/1 |
| 11月 | 2026/12/1〜2027/11/30 | 2026/12/1 |
| 12月 | 2027/1/1〜2027/12/31 | 2027/1/1 |
9月決算は 2026/10/1 からで最も早く、 8月決算は 2027/9/1 からで最も遅くなります。 個人事業者は課税期間が暦年なので 2027/1/1 からです。
実務でどう備えるか
- 取引先ごとに年間の仕入額を把握できるようにする。判定が1者ごとなので、免税事業者からの仕入れを取引先別に集計できる状態にしておく必要があります。
- 1億円に近づく取引先を先に洗い出す。多くの事業者には関係のない金額ですが、該当しうる取引先が1社でもあれば早めに確認する価値があります。
- 自分の初適用がいつからかを確認する。上の表で決算月を見てください。控除割合の引き下げとは別のタイミングです。
よくある質問
免税事業者からの仕入れを全部合計して1億円ですか。
いいえ。条文の文言は「一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの額の合計額」です。取引先1者ごとに合計して判定します。複数の免税事業者から合計1億円を超えても、1者あたりが1億円以下なら上限にはかかりません。
税込ですか、税抜ですか。
国税庁のリーフレットにも財務省の大綱にも明記がありません。いずれも「課税仕入れの額の合計額」とだけ書かれており、消費税法30条の「課税仕入れに係る支払対価の額」という語も使われていません。当サイトでは解釈を書かず、原文の引用にとどめています。判断が必要な場合は税理士にご確認ください。
1億円を超えたら、その取引先からの仕入れは全部控除できなくなりますか。
いいえ。超えた部分の課税仕入れについて経過措置が使えなくなります。1億円までの部分には経過措置が適用されます。
控除割合の引き下げと同じタイミングで始まりますか。
違います。控除割合(80%→70%)は課税仕入れを行った日で判定するので決算月に関係なく2026年10月1日からです。一方この上限は2026年10月1日以後に開始する課税期間からなので、決算月によって最大11か月ずれます。
関連ページ
出典
本ページの数値はすべて以下の一次資料から取っています。リンクは該当ページに直接飛びます。
- 国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」p.2 (2026-04 公表・2026-05 改訂)
該当箇所:2 適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置の改正(7・5・3割控除)/その他の改正
当サイト確認日:2026-09-15 - 財務省「令和8年度税制改正の大綱(4/9)二 消費税 2 適格請求書等保存方式に係る経過措置の見直し」
当サイト確認日:2026-09-15
本サイトは一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談ではありません。適用の可否は必ず国税庁の一次資料および税理士にご確認ください。
法令基準日:2026年9月15日 ― 本ページが参照した官公庁資料を当サイトが最後に確認した日です。 以後の法令改正・資料改訂は反映されていない可能性があります。